こんにちは。「ホリマリ クリエイティブワークス」グラフィックデザイナーのホリマリです。私のイラスト制作では、実際の植物をデフォルメしたものから、それらを発展させた想像上の植物を混合させたものがよく登場します。
それは、写真では表現が不可能な世界をイラストなら作れるからです。今日は「デフォルメとデザイン」について私なりの制作方法を書いていきたいと思います。少しでもみなさんの参考になれば嬉しいです。
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◾️デフォルメとは?
【 デフォルメ:déformer】
美術において対象を変形させて表現すること。
自然の形にゆがみを加えて表現すること。
何かのモチーフを簡略化して図形にしたもののことを一般的にデフォルメと言います。
逆に目に映ったものを忠実に描くことを写実といいます。
Dual大辞林より
自然のものの神秘さと美しさには何者も勝てません。でも、イラストだからこそ「こうであって欲しい」という思いや「こうだったら、どんなに素敵だろう」という世界を表現することができます。その表現に欠かせないものがデフォルメです。モチーフを簡略化して図形にするという表現の積み重ねでイラストは成り立っているからです。
反対に全くデフォルメされていないものは、そのものを写し撮った写真になりますね。また、現実をよりリアルに表現するイラストや絵画の分野もあります。植物で言えばボタニカルアートなどが、その分野だと思います。ですが、目に映ったものを忠実に描く写実的な表現でも、制作者の意図によりデフォルメはされています。
写実的な絵画にもあるデフォルメ
絵画の世界にも様々な形態があります。こちらは、貧しい農民の暮らしを描いたジャン=フランソワ・ミレーの代表作「落穂拾い」です。
現実の世界を写実的に描く「写実主義」的な絵画となります。そこには写真かと見間違うようなリアルな世界が広がっています。そして、もう1つ・・・
ミレーの晩年の作品「春」です。こちらも「落穂拾い」同様にオルセー美術館に所蔵されています。農村の風景がリアルに描かれていますね。でも実際はリアルでありながら理想的なイメージに近づけるために、空の雲の形や色や場所、モチーフの配置や色味、大きさなどを画家の持つそれぞれの美意識によって、よりリアルにそして理想に近づけるためのデフォルメが制作者の意図で行われています。
つまりデフォルメは、イメージする世界に近づける為の、ひとつの確立された表現方法と言えます。そのイメージが写実的なものか、イラスト的なものか、さらにはアニメのようなものなのかは関係なく、その目的に合わせたデフォルメを、表現者の感性とテクニックで行うための、それぞれの考え方が必ずあります。
今回は、私が行うデフォルメの考え方をお伝えしたいと思います。
◾️ホリマリが行うデフォルメの考え方
まずは見たままのモチーフを忠実に分析する
何かの複雑なモチーフを、見たままではなく、デフォルメで表現するということは、「ある意味」見たまま描くよりも難しく感じることもあります。それは「見たまま」であれば、忠実に見たままを描くことに意識を集中させればいいからです。
ですが「デフォルメ」する場合は、その「複雑なモチーフ」のどこが「そのモチーフらしさ」であるのかをとらえなければなりません。
かつ、それを簡略化しながら表現するという、別の意識も働かせなければならないわけですね。
ですが、ただ簡略化するだけでは「そのモチーフらしさ」はなかなか表現できません。
なのでまずは「見たまま」のモチーフを忠実にとらえながら、そのモチーフを分析します。そのモチーフの持つ「情報」を、一旦全部洗い出すわけですね。
モチーフの持つ「情報」って何?
モチーフの持つ「情報」とは、形状などの情報もあれば、質感などの情報もありますね。色情報もあれば、大きさの情報や印象という情報など、そこには他にも様々な情報があります。
それらの事実として存在する情報と、自分なりに導き出した「そのモチーフらしさ」とは何か?という答えを照らし合わせていきます。
デフォルメするということは必要ないと判断した情報を捨てる作業
そうすることで、自分が表現したい「世界観」にするために、必要な情報と、捨てる情報を分類するわけですね。もし「情報」をそのまま全部使えば、「見たまま」の写実的な表現になります。
デフォルメするということは、自分が表現したい「世界観」にするために、必要ないと判断した情報を捨てる作業であると考えます。そして導き出した「そのモチーフらしさ」を自分の世界観に落とし込んでいくためには、残した情報をどう膨らますことで表現できるかを考えます。
こうして出来上がったデフォルメ作品は、ただ見たまま描いたものよりも、ずっと「そのモチーフらしさ」が、自分の世界観の中で表現されているはずです。
つまり私の考える「デフォルメ」とは、そのモチーフを自分らしく表現するために、どの情報を捨て、どの情報を選択するかを決めることなのです。
◾️ホリマリが行うデフォルメ作品の具体例
例えば、ホリマリのデザイン講座「プチデザイナーコース」で作ったミモザやアリッサムも、デフォルメしてイラストにしています。
ミモザのデフォルメ
ミモザの場合であれば、実際のミモザは1つ1つの丸い黄色い花の部分は、ものすごく細い糸のような花びらの集合で構成されています。細い毛糸で作ったポンポンのような感じの花なんですね。
その細い糸のような花びらの情報を捨てて、1つの丸にしたというわけです。使った情報は、黄色という「色」情報、そして丸いという「形状」情報です。
また1つ1つの丸い花は細い茎で枝とつながっていますが、その細い茎という情報も捨てています。丸い花だけで表現するデフォルメをしていたのですね。
そしてミモザの葉っぱは「複葉」と呼ばれる種類のもので、1枚の葉っぱの中に、小さな葉っぱが規則正しく並んでいて1枚の葉っぱになっています。
「プチデザイナーコース」で描画した葉っぱの1本1本の線が、実はそれと同じ形をした、とても細かな葉っぱなんですね。それをものすごくデフォルメして、このような形状にしています。つまりミモザの1枚の葉っぱの中にある、それぞれの細かな同じ形の葉っぱの情報を捨てて1本の線にしたというわけです。残した情報は、葉っぱ全体の形状情報のみとなります。
このデフォルメで仕上がったミモザはこんな感じです。簡単な図形と線のみの構成なので、イラストレーターとデザインが学べる「プチデザイナーコース」の第1回目の制作課題に抜擢しました。
でも、ただ丸や線で構成されているだけかと言うとそうではありません。ここでミモザをしっかり分析したことが、めちゃくちゃ役に立つわけですね。例えば、実際のミモザは三次元に存在するので立体ですよね。でもそれをイラストにすると二次元での表現になります。二次元=平面なので奥行きがありません。それを平面上で奥行きや立体感、遠近感などをつけていく事で、デフォルメされたミモザがより生き生きと存在感を増します。
デフォルメしたミモザに平面上で奥行きや立体感、遠近感などをつける
具体的に何をしているかと言うと、手前にある黄色い丸と、奥にある(ように見せたい)黄色い丸の色を調整しています。奥にある(ように見せたい)黄色い丸は、手前にある黄色い丸の背後にある設定となるので、手前にある黄色い丸の影になります。ですので、影にあることがわかるように少し暗めの黄色にしているんですね。たったこれだけでの事で、ミモザに奥行きが感じられるようになります。
また、奥行きを強調させるために、手前の黄色い丸は茎よりも前面に配置し、奥にある暗い黄色い丸は茎よりも後ろに配置しています。
そしてランダムに茎とそれぞれの黄色い丸が重なる箇所を作っています。こうすることで、1本の茎を軸に手前の黄色い丸と奥にある暗い黄色い丸が、色だけではなく確実に手前か奥のどちらかに位置する見た目になるわけですね。
1束のミモザを、このようにしっかり作り込んでおくことで、ピッチャーアレンジのように単品で何本か差し込んでも、あるいは上の画像のようにたくさん束ねてブーケにしても、違和感のない仕上がりになりました。
アリッサムのデフォルメ
ホリマリ のイラストやデザインの中で度々登場するのがアリッサムです。アリッサムは主役にはなりにくいモチーフですが、主役を引き立たせる装飾や、ボリュームを付けたい時などにも塊の形状を変化させながら、自由自在に使えるのが魅力の欠かせないアイテムです。下の白くて丸い小さなお花の塊がアリッサムです。
アリッサムの場合も同様で、1つ1つの花は小さな4つの花弁がちゃんとあります。花芯の中心にいくとグリーンに色が変わりますが、黄色い小さなおしべ・めしべもあります。
その花弁の情報を捨てて、1つの白い丸にデフォルメしました。小さなおしべ・めしべの情報も捨てて、花芯の中心のグリーンの部分の情報のみ採用したというわけです。
元が小さな白い丸の中心に、グリーンのグラデーションを小さくつけただけのデフォルメなので、形状を長〜く作る事で雪柳に変化させることもしています。
葉っぱの見え方も意識的に少なくして、重なり合いながら所狭しと咲く様子を、カードとして作成しました。アリッサムの群生、雪柳、ミモザを使っていますが、どれも元は小さなたった1つの丸です。簡潔にデフォルメする事で、その先の「世界観」を含めたデザイン制作のクオリティと時短というプラスアルファの嬉しい価値が生まれました。
◾️デフォルメとデザイン まとめ
作り上げたい世界観を、最初にしっかり思い描きながら、デフォルメ対象のモチーフを観察することで、どの情報を捨て、どの情報を選択するかがしっかりと見えてきます。つまりデフォルメの仕方は、思い描いた世界観により、大きく異なるということですね。
そして「観察」「分析」をすることで、どのようにそのモチーフを自分らしく表現することができるかという一番大切な部分にも向き合えるので、私にとっては欠かせない工程でもあります。この記事があなたのデフォルメ制作の参考になることを心から願っています。
最後までご覧くださりありがとうございました。
ホリマリ (”ー”)XOXO♪
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